9日目、旅も終盤。
早朝トゥールを出発して、ボルドーに向かう。
車窓を眺めつつTGVの食堂車でブランチ。
ボルドー駅から、急いでホテルへチェックインしてタクシーに乗り、
最後のアポイントである『シャトー ファルファ』の元へ。
高速道路を降り、丘へ登り、美しい緑の中、石造りの門構えが見えて来ました。
『シャトー ファルファ』
立派な門構え。
あぁ、シャトーだ。
当主ヴェロニク女史が出迎えてくれました。
一通りご挨拶をしたあと。
「畑を見に行きましょうか。」と案内していただく事に。
女性の当主だからか、シャトーの周りは緑と花に囲まれてとても美しい。
そして驚いたのが、畑に向かう途中、まず入ったのは竹林でした。
フランス、ボルドーで竹林を目にするとは思っていなかった。
それから森を抜け、
美しい畑へ。
マダムは優しい口調で話してくれます。
「葡萄畑はビオディナミ、もちろん自然な栽培です。
そして、畑の側には葡萄を護る森があり、森の脇にはその森を護る竹林がある、竹林はとても強いんです。
その広いエリアは一つの自然環境を形成していて、その中にはあらゆる生き物(動物も微生物も)が生きている。葡萄を病気から護ってくれる優しい風がそこを抜けてくれる。
その美しい自然環境の中、葡萄を栽培する事はただ自然に耳を傾けて、しっかりと見守る事なんです。
多くの人々は自然を怖れて抗い、コントロールしたがる。でも、怖れる必要なんか無い。
寄り添えばいい。
その年によって気候は違うし色々なことは起きるしワインにも勿論違いが現れます。それは当たり前だし個性です。それが楽しいし、それこそがテロワール。抗ってケミカルな物に頼ったりして同じ様なワインを造る事なんて不自然だし、そんな事に意味は無い。」
と。
「ただ、自然と一緒に。」
印象に残る言葉。
穏やかだけど、とても芯の強さを感じました。自然の事を信じているし、自身の事も信じられる方なんだと思います。それはとても美しい事だと思う。
それから、醸造も見させて頂く事に。華美では無いけれども、クリーンで品の良い室内。コンクリートタンクが並びます。
垂直式プレス。
熟成中のワインたち。
彼女の好みとして、葡萄果実の味わいを重んじるので強い樽香には頼らない造り。抽出も強すぎず、タニックにストロングになってしまう前にプレスしてエレガンスを大切にする醸造。彼女の人柄を表している様です。
「主人が生きていた頃はよく言い合いになったわ、彼はストロングスタイルのボルドーが好きで私はエレガントなワインが好きで。」
マダムは思い出す様に、微笑む様に話してくれます。
プレス機の脇に一つだけ小さな樽がありました。
「こっそり白ワインも造っているの。家族の分だけね。」
家族を大切にしているヴェロニクさん、2人の娘さんもソムリエとワイン醸造とそれぞれワインの仕事をしているそうです。
それからテイスティングルームへ。
やはり品の良い室内。なんだか落ち着きます。
ずらりと順番にテイスティング。同じキュヴェのヴィンテージ違いも頂いてそれぞれのテロワールの話もしてくれました。
「テロワールが味わいに出ているでしょう、でもそれは良い悪いではなくて個性なの。どちらが好きですか?」
「どちらも好きです。それぞれに良いところがあるし、それぞれに合わせられる料理があると思います。」
本当にどれも素晴らしい。マダムの言う事が良くわかります。
特にボルドーでは、このヴィンテージは良いとか悪いとかそういう話もありますが、このワイン達に優劣はつけられない。それぞれに個性があるだけで、どれも素晴らしい。そして自然からの恵みなんだと実感しました。
そして、写真撮影を。
マダムの優しい笑顔が素敵です。
帰りにはなんとお土産にと [シャトーファルファ1995]を頂いてしまいました。
「そんな貴重な古酒いただけないですよ、もう日本には無いんじゃないですか?」
「多分もうここにしかないわ。今日は楽しかったから。」
なんて素敵なギフトでしょう。
シャトーのまわりには沢山の花が咲いていて、
中でもヴァイオレットのバラが印象的でした、マダムが
「香ってみて下さい。素晴らしいワインの様な香りがするでしょう。」
と、一緒に香りをとって笑顔に慣れたのが嬉しかったです。
最後まで上品で親切で美しい、素敵なマダムでした。
『シャトー ファルファ』
ワインだけでなく、シャトーも、当主の人柄も、本当にエレガントです。
ありがとうございました、ヴェロニクさん。