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pipal 渋谷宇田川 スタッフブログ

2017-07-18-Tue

ソムリエ 鈴木亮介、生産者を訪ねて。 vol.7

レイモン・デュポン・ファンのムルソーを後に、また少し北へ。
ボーヌの『ファニー・サーブル』の元へ。
早くに父親を亡くし22歳の若さでドメーヌを継承した女性醸造家、ファニー・サーブル。あのフィリップ・パカレの指導のもと、ナチュラルなワイン造りを学んだという逸話は有名です。
年々進化し続けている彼女のワイン、現在進行形のワインはどんな状態に仕上がっているのか。楽しみです。


もう、どちらを見ても葡萄畑で美しい景色。
それから、村に入って行きちょっと入り組んだ道を進んむと、ファニーが出てきてくれました。
予想より遥かに小さな所で少し驚きです。
ちょっと写真が少なくてすいません。
自己紹介と挨拶をさせていただいて、醸造所を見せていただきました。


とても、こぢんまりとしている。
若くして、もはやボーヌを代表する醸造家の印象すらある彼女の醸造所というには小さくて予想外でした。
とても小さなドメーヌだと彼女は言います。
ここで熟成させているのは2016ヴィンテージのワインしかないのだそう、1年分しか保管する場所がないから完成させたらボトリングしてリリースしてしまうんだとか。


ここは地下のセラーで、上の地上階に発酵タンクはあります。
写真中央右から伸びているホースの様な物おわかりでしょうか。
このホースは地上階から伸びていて、発酵してプレスしたワインがこちらを通して地下の小樽に移せる様になっています。ポンプなどを使わずにこうして重力の作用でワインを運ぶ様にすることで液体へダメージを与えない様にしているんです。
こうした方法をグラヴィティシステムと呼びます。
ナチュラルなワインの生産者はグラヴィティシステムを導入している方も多くて、
大きな醸造所になると、収穫したものから発酵タンク、プレス機、熟成タンク、熟成樽とグラヴィティシステムを採用すると地下へ地下へと進んで行く事になります。結果的に地下は低温でセラーにも適していてちょうど良いですが、地下深い設備を設けるのはなかなか大変な事でもあります。


こちらは2016年ブルゴーニュルージュの熟成中の樽です。エチケットにも使われているファニーのイラストがカワイイ。
色々なキュベをテイスティングしながらお話しを聞かせていただきました。


こちらはモンテリールージュ。
ヴァンナチュールがついナチュールらしさを求めてAOC※1 の個性を消してしまうのに彼女は反対な様で、ナチュラルは前提として、テロワールを表現する事に重きを置いています。全くもって素晴らしい考えだと僕も同感です。ナチュールだったらなんでもいいって訳じゃない。ナチュラルな前提の上、テロワールの個性、品種の個性、そして美味しいワインであるという事が大切なんです。

色々なキュベをテイスティングしていくと同じヴィンテージでもやっぱり個体差があります。まだ熟成足りないかなーとか、まだ還元※2 のニュアンスがあるかなーとか話しながら続けます。もう完全に仕上がってる味わいのキュベがあって
「これもう完璧じゃないですか。」
「そうなの、これはもう来月にボトリングしようと思ってる。」
「やっぱり!」
ってなんだか楽しいです。
「レストランはどれくらいの大きさなの?」
「うーん、40~50席位のお店です。大きくもないし、すごく小さいわけでもない、ミドルレンジ。」
「私もワインバーをやっているのよ。」
「えー、びっくり!行きたいです。今日は、営業します?」
「今日はお休みなの。」
「残念〜。」

それから聞いてみたかった事が、
「僕はブルゴーニュのワインが大好きです。ただ年々値段の高騰が進んでいて、なかなか気軽には飲めない物になってきてしまっているし、僕らみたいなカジュアルなレストランではなかなか提供しづらい金額になってきてしまっています。ただ、あなたのワインはまだそれほど高級な訳じゃないです。今後どうなっていくのでしょう。」
「そう、ブルゴーニュのワインは高くなっている。でも私はフィリップみたいに有名ではないしブランドではない。そして気軽にみんなにワインを楽しんで欲しいから高級なワインにしたくは無いの。」
素晴らしいです。有名では無いっていうのは認識次第ですが、彼女は既にかなり認知されているし、これからますます有名にはなっていくでしょう。
ずっと気軽に楽しめたら最高です。ついていきますよ、ファニーさん!

彼女のナチュラルでテロワールも重んじるワイン造りのフィロソフィーはやはり師匠であるフィリップ・パカレから譲り受けていて、そのフィロソフィーはパーフェクトです。
でもファニーの言った、とても印象に残った言葉が、
「私のフィロソフィーはフィリップ・パカレと同じです。でも私はコピーロボットじゃ無い、私の造るワインは私の造るワインなの。」
まだ30代にして誇り高きヴィニュロン※3 。彼女は今後のブルゴーニュを担う存在になっていく事でしょう。ますますファンになってしまいました。


そして恒例の記念撮影をパチリ。
今日はありがとうございました。

「ちょっと、待って。」


「これ、プレゼント。」
って、えー!マジですか?!お土産までいただくだなんて!
しかも見た事の無いキュベ、まだリリースしてない物なんだそうです。
エチケット可愛い!しかもリリース前の超レアアイテムじゃないっすか!

『ファニー・サーブル』今後がますます楽しみです。
今日は本当にありがとうございました。

ちなみに帰国後飲んだ、こちらのキュベはフランボワーズの味わいがとってもキュートで美味しかったです。



※1,AOC:原産地名称保護。その産地の物だとして認められる品質保証。
※2,還元:還元香。酸化防止剤をあまり使わないワインに現れる独特な香り、強い物だと豆やタクアンの様な香りになったりもするが空気に触れていると消えていく。ファニー・サーブルの場合、熟成でボトリングまでに消えていく。
※3,ヴィニュロン:ワインを造る人。


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