マルセル・ラピエールのボジョレーを後にして一気に北上、
ブルゴーニュのムルソー『レイモン・デュポン・ファン』の元へ。
小さな村に入ったなーという感じで家々の間を進んでいき、
舗装されてない小道を抜けると丘の下を見渡せる所に綺麗な建物が。
敷地に入ると芝生の庭に池があり鯉が泳いでいる。
建物の脇にはプールが。
これはまた、なんて気持ちの良い所だろう。
レイモンが現れて「入ってきて良いよ。」と手招きしてくれた。
Tシャツに短パン、気取らない感じがまた気持ち良いです。
すごく素敵なリビングに通して頂いて、まずは恒例の挨拶と自己紹介をさせていただくと。
早速、
テイスティングに!
ちょっと予想外の展開ですが、まずはアリゴテ※1 から。
テイスティングしながらその畑のテロワール※2 の説明をしてくれます。
畑の説明はアイフォンの地図アプリで場所を示してくれます、今っぽい。
落ち着いていて貫禄はありますがレイモンは僕の3つ下で37歳なんです。
畑は点在して所有しているのでこの日は足は運ばない事に。
このアリゴテがめちゃくちゃ旨い。ミネラル感とフィネス※3 を感じます。
彼のアリゴテは素晴らしい、アリゴテを軽視する方もいますが
彼の説明からはアリゴテへの想いを感じます。
ワイン造りの方法やテロワールを聞きながら次々と色々なワインをテイスティング。
シャルドネも当然旨い、派手なボリューム感とか樽香とかでは全然なくて、
繊細でエレガント、ミネラリーで綺麗な酸味、どこまでも真っ直ぐに続く長い余韻。
とっても上品です。
トゥーマッチな物は要らないと彼は言います。
樽香※4もつけすぎず、シンプルな葡萄の味わいを大切にし、テロワールを大切にしています。
ムルソー※5 を2種類テイスティングさせてもらいました。
同じムルソーで少しだけ離れた畑違いのキュベ。
「ヴィンテージも品種も栽培も醸造も全て同じだよ、どう。」
「違う、どちらも素晴らしいけど、違いますね。」
「ボリューム感も、酸の伸びも個性が違う、全て同じ造りなのに。これがテロワールだ。」
「ミクロクリマ※6。」
「Exactly(その通り)。」
とても面白い、敢えて畑でのフィールドワークも醸造方法も変えずに造る事で純粋にテロワールの個性が楽しめます。彼のテロワールへのリスペクトを感じます。
次のワインをサーブしてもらう間につい部屋の中をキョロキョロしちゃいます。
とてもセンスが良い。
内装なんかも自分でやったそうで、あんまり派手な感じは好みでない様子。
自分でD.I.Y.しちゃう感じとか、派手なものよりシンプルなものを好む感じとか、
pipalを手作りで作った僕としてはなんだか共感してしまいます。
好きなものの方向性が近いような気がする、年齢が近いという事もあるかもしれません。
あ、これなんかお店にぶら下げたいな。
なんて考えてたら庭のプールで遊んでいた息子さんが入ってきて(4~5歳くらいかな?)挨拶をしてくれました。右左の頬にキスのフランス式挨拶でめちゃキュート!
それから、醸造所を見せてもらう事に。
発酵はステンレスタンク。
醸造所もとてもクリーンでシンプルです。
もうこの頃には彼らしいなと思える様になってきました。
プレスはバルーンタイプ※7 、モダンです。
今回の旅であまり出会えてなかったのでなんだかホッとします。
それから熟成。いわゆるブルゴーニュ樽※8 です。とっても綺麗。
リリース待ちのキュベが静かに眠っています。
リビングも醸造所もシンプルでクリーンで、とてもセンスが良くて。
それは彼のワインのエチケットも同じくシンプルでセンスが良い事と繋がります。
最後に恒例の記念撮影を。
ナイキのプリントTが僕の普段着と変わらない感じでなんだか親近感が湧いてきます。
今回レイモンとがっちり2時間位話しをさせていただきました。
沢山話をしながらテイスティングをして感じた事が、
テロワール、葡萄を大切にし、余計な飾りやトゥーマッチな物は要らないという
彼のフィロソフィーがワインの味わいに如実に現れているんだという事。
そして、それだけでなく、知的でセンスが良くて
真っ直ぐに自信を持ってワイン造りをしている彼の個性もまたワインに現れているんだという事を感じました。
ワインの味わいには葡萄の個性、テロワール、そして生産者のフィロソフィー、さらには生産者の個性までもが現れるという事。
このワインはここでしか、また彼にしか造れない味わいになっている。
全てのキュベに一貫した個性がありました。
とても上品でシンプルで、トゥーマッチなものはいらないワイン。
また一つワインへの理解が深まったような気がします。
『レイモン・デュポン・ファン』本当にありがとうございました。
※1、アリゴテ:葡萄の品種。ブルゴーニュでは白葡萄はシャルドネの他にこのアリゴテが栽培されています。酸味が強く、安いワインに使用する事が多い。
※2、テロワール:葡萄を取り巻く、気候、地勢、土壌、など全ての自然環境の事。ワインはテロワールを表すと言われます。
※3、フィネス:繊細、優雅、上品、などを意味する言葉です。ワインの表現によく使います。
※4、樽香:オーク樽で熟成させた事によりワインにつくバニラの様な香り。新樽を使うとより強く表れる。
※5、ムルソー:ブルゴーニュのワイン生産地の一つ。ムルソーのエリアの中の畑の葡萄から造られるワインもムルソーと呼ばれる。エレガントな白ワインが有名。
※6、ミクロクリマ:テロワールをもっと細かいエリアで考えたもの。日本語に訳すと微小気候。ブルゴーニュでは隣の畑でも土壌が違ったりして、その事がワインの味わいに表れます。
※7、バルーンプレス:葡萄を圧搾する機械で中に風船の様な物が入っており、空気の圧力で優しく圧搾する事ができる。
※8 ブルゴーニュ樽:ピエスと呼ばれる228Lのオーク樽。ボルドーではバリックと呼ばれる225Lの樽を使用したりと地方によって呼び名や容量が変わります。