さて、ジャン・クロード・ラパリュのブルイィを後にして北上。
ボジョレーエリア内でもマコンにほど近いエリアに位置する、
『シリル・アロンソ&フロリアン・ルーズ』の元へ。
辿り着くと入り口には、
見慣れたP-U-Rのロゴが!ワクワクしますね〜。
ご挨拶をさせていただいて、
早速、アロンソさんに畑を案内していただく事に。
ちょうど日本人の女性が二人、こちらのワイナリーに働きに来ているタイミングで、一緒に案内してくださいました。フランス語が全然ダメな僕としてはメチャクチャ助かりました。
元々はネゴシアン※1としてワイン造りをしていたお二人、有名な [P-U-R] シリーズのワインは全て優秀な栽培家から入手した葡萄で造る、いわゆるネゴシアン物です。
そして2015年にこちらの畑とシャトーを取得して、ドメーヌ物※2の生産も開始したのです。
しかもこちらの畑、元々は自然派ワインの祖とも言われる、かの「ジュールショヴェ博士」が所有していた畑なんです。伝説の土地と言っていいでしょう、つい興奮してアロンソさんに「レジェンドグラウンド!」と言ってしまいました、表現が稚拙です。(笑)
こちらの写真も品種はガメイです。
ワイン学校ではガメイはゴブレ仕立てで針金を使わないと教わりましたが、今回訪問した生産者の方々は皆、いわゆる垣根仕立てで栽培をして、剪定し収量コントロールをしていました。
もうカベルネソーヴィニョンなんかと変わらない仕立てなんです。
凝縮度のある品質の高いワイン造りをしていくとこうなる、っていう事なんでしょうね。
こちらは樹齢の低い可愛いキッズ葡萄ちゃんの区画です。
そしてこちらはもっと可愛いベイビー葡萄ちゃん。
なんとこちら自根の葡萄樹だそうです!
専門的な話になりますがワインの葡萄樹はほとんど全て根っこの部分と幹から上の部分は別の樹です、接木して二階建ての仕組みになっているんですね。フィロキセラ※3という害虫から守るためなのですが、本当は自根で健全に育つのであればそれに越した事はないんです。
アロンソさんチャレンジャーです。素晴らしい!
そしてこれが大変に興味深い物だったのですが、『ビオトープ』と言います。
所有している土地を全て葡萄畑にしてしまわないで、畑の間に所々草とか枝とかを放り込んだこうした草むらのような区画を作っているんです。
これはウサギなどの動物たちや虫なんかが生息できるための場所として用意しているそうで。ナチュラルなワインを造るためには畑をオーガニックにするだけではなく、周囲の自然環境や生物と共にある事が重要だという考え方なんです。「全部畑にしちゃったら動物たちが行くところなくなっちゃうだろ?」ってナチュラリストならではの発想、挑戦、素敵です。
醸造も一通り見せていただいたのにちょっと興奮していて写真があまりありません、すいません。こちらは樽熟成のキュベ。
それからこちらはアンフォラ熟成※4。アンフォラは職人さん手作りの物で一つ一つ微妙に違うのでワインの熟成もそれぞれ同じものはないんだそうです。実際見てみると表面が少し湿って滲み出ているものもあればサラサラとしているものもあって、ワインの呼吸の量が違うのがわかります。酸素の浸透率が変わればもちろん熟成にも影響が出てくるという訳ですね、興味深いです。
で、こちらの貴重なワイン (ドメーヌ物、サンスフル※5、アンフォラ熟成、熟成中)を、なんとテイスティングさせていただきました。こちらで仕事をしている日本人のお二人もこれを飲むのは初めてだと仰る。なんと、そんなのいいんですか?「今日はスズキが来たからね。」ってなんだか解らないけどメチャクチャ恐縮です。注いでいただく時に思わず腰が低くなっちゃって、へへ〜、ってグラスを差し出したら笑われました、ジャパニーズスタイルです。へへ〜。
こちらがそのドメーヌ物 [ シャトー・ド・ベルアヴニール ボジョレーヴィラージュ ]
左のボトルがサンスフルです。サンスフルでもネガティブな香りなどは一切なく染みる味わいかつエレガント。
こちらテイスティングの時にまさかのブラインドきました。
畑もヴィンテージも同じ葡萄で醸造も同じ、ただ1つはサンスフルで1つは少量の酸化防止剤添加をしている。2つ出されて「サンスフルはどちらだ?」って。どちらも素晴らしく、凄く微妙な違いなので悩みました。ただ片方が完璧にフィックスしている様に感じたので少量のSO2添加かなと思い、少しあやうげなニュアンスを孕んでいると感じた方がサンスフルだと判断しました。ハズレです、修行足りませんね〜、言い訳をするなら醸造がうますぎです、酸化防止剤いらないです。
とっても、よくしていただいて最後に記念撮影を。
お二人ともカッコイイです。ありがとうございました。
で、「この後も何か予定があるのか?」「いや、今日はこれで終わりですね、あとはボーヌのホテルに戻るだけです。」「ディナーにしよう!」ってえー!?メチャクチャ嬉しいです!
シャトーの傍にある石造りのテーブルでパーティーになってしまいました。
天気も良く、葡萄畑とシャトーを眺めながらそのワインとお食事をいただくという究極のロケーション。
全てがオシャレです。フロリアンさんが次々と注いで下さる。
こちらでお仕事をされている皆さんも一緒に色々とお話をする事が出来ました。
ワインはこれからもっとナチュラルになっていくであろうという事、キュイジーヌもナチュラルであるべきだという事。僕もシェフとして[ナチュラルである]という事にこだわってその結果、素材も選び、自家製手作りの料理をしています。これからの未来、飲食はもっとナチュラルになるべきだと思っています。身体を作る元ですから。健全な食は健全な身体を作ります、また健全な素材は自然環境へのダメージも少ないと考えます。pipalの食事はフレンチがベースにはなっていますが、ジャンルの垣根はあまり重要だとは考えていなくて、大切なのはナチュラルであるという事だと思っています。それからもちろん美味しいという事、楽しいという事。
アロンソさんは次々と新しい挑戦をしていてどこか反骨心も感じさせます。若い頃パンクミュージックに傾倒していた僕としては、そういうところにも惹かれてしまいます。ナチュラルパンクスだ!(なんのこっちゃ)僕もブレない芯を持って次々チャレンジしていきたいなと改めて思う事が出来ました。
もう、食べて飲んで話して、とても楽しい時間をいただきました。本当に感謝です。
すっかり気持ち良くなっちゃって、最後に記念撮影を。
アロンソさん、フロリアンさん、それからご一緒していただいた皆様、本当にありがとうございました!
※1 ネゴシアン:原料となる葡萄を、栽培家から購入して醸造しワインを造る生産者。またそうして造られるワインをネゴシアンワインと呼びます。
※2 ドメーヌ:畑で葡萄の栽培も自身で行い、その葡萄を醸造してワインを造る生産者。またそうして造られるワインをドメーヌワインと呼びます。
※3フィロキセラ:1863年にアメリカから渡ってしまったと言われる害虫。当時フランスの葡萄樹は壊滅的な被害を受けました。アメリカ産の葡萄樹が被害を受けないという事が分かり、その後、根の部分はアメリカ産の葡萄樹を使用し接木してフランスの葡萄樹を栽培するようになりました。
※4アンフォラ:陶器の甕。古代ローマでワインを熟成保存するのに使われていました。木の樽よりも酸素が浸透しやすいと言われます。ナチュラルなワインの生産者で近年使用する方が増えています。
※5サンスフル:酸化防止剤(亜硫酸塩、SO2)無添加の意味。酸化防止剤無添加ワインをサンスフルワインと呼びます。